Dr.トマベチの「脳と心の洗い方」を読んだ

アマゾンでの評価が極端に分かれていたのがちょっと気になりながら読んだのだけれど、基本的にはブッ飛んでいて面白かった。

物事の正確性で説得力を持たせるのではなく、Dr.トマベチのカリスマ性で押してくる本だった。断定的な口調に終始し、それによって力強さを向上させるのを狙っている印象を受けた。その分正確性は犠牲になっていて「統計的に内科の誤診率は70%」や「60分の1フレームのサブリミナル画像が見えた」とかいう記述があった。

前者はまあ「内科」、「誤診率」の言葉の定義や、統計を取る母集団を操作しまくったらそうなるのかもしれないけれど、医学生の自分としては全く信じるに値しない記述だ。後者も「私は訓練しているから30分の1フレームと60分の1フレームを見分けることができる」というような内容が書いてあり、もちろんそんな訓練していない僕が正しい判断はできないのだが、まあ嘘っぽいなーとは思う。

でもまあそんなツッコミはきっと無粋なのだろう。今言及したことは本の主題ではないし、分かりやすさ指向や自分を大きく見せる戦略としては正しい構成だと思う。それに全体的には、ある分野にある程度以上甚だしい知識や経験がないと書けない内容が多く含まれていて、非常に楽しめた。

僕個人の嗜好としては、分野を問わず「ある程度以上」というものにもの凄くパワーを感じる。本当に分野は何でもよくて、人間の殺し方でも、大人数に影響を与えた聖人の一言でも、強固なダムの作り方でも良い。ある程度以上の突出しているのなら。


本の説明に戻ると、一般的なライフハック系の本とは内容が若干違っていた。

それは、大いなる自己変革を要求する点と、その方法をあまり詳しく言及していない(できない?)点だ。人生を変えるためには、全ての物事に意識的になって、想像力を極端に鍛えて使えるようにしなさい、という内容だと僕は理解した。要するにこれは無意識だとか認知レベルの変革なので、実行する人は限られてるだろうなーと。

また方法が詳しくないというのは、自己変革とかいうレベルまで話が進むと、普段そこまで考えてない人はまず理解しにくいし、実際にどう行動すればよいのか想像しにくいことによる。あと洗脳とか絡んでくるからあんまり詳しく書けないという一面もあるのだろう。きっとアマゾンで低評価を与えた人達は「相手に怒られたときは、鏡を見せましょう。そうすると怒ってる人は自分をいったん客観視して冷静になるので、あまり怒られませんよ」みたいなレベルを期待していたか、内容が理解できなかったかどっちかだろう。


ところでさっきから分析ばっかりしてるけど、ライフハック系の本を分析しても大して意味ないな。潜在的な需要もゼロだろうし、本が求めているのは本の影響で読者が変革することだし。というわけで明日は画材屋に行ってパレットと絵筆を買って来ようかと思う。あと共感覚の訓練もちゃんと始めなきゃ。

しかしこの人工共感覚の作り方ってどうなんだろう?説明されていたのはこの壁はこの音、この服はこの音、この絵はこの音っていう作業を続けてると、何か見たときに音が聞こえるようになるっていう方法論だった。つまりこの作業を続けると何か見たときにその何かを要素に分解して、今まで作業して音を付けたものとの関連性などから自動で類推するような経路で音が聞こえるようになるってことだと僕は認識した。そんな上手くいくのかなー。まあkaerusanuさんの前例もあることだし、やる前から批判してもなんだか虚しいし、とりあえず信じてやってみよう。共感覚があったら絶対楽しい!